メリーゴーランドの思い出

メリーゴーランドってなんでこんなに切ないんだろう。

はるか昔に感じた何かがぼんやりよみがえる。


白とパステル系を基調に、金箔がぴかぴか光るメルヘンの世界。
大きな円盤ステージにツヤのある白馬や馬車がたくさん並ぶ。
動き出すと馬は優しく上下しながら回転し、馬車は上下には動かずそのまま回転する。
自分の乗った馬と前後の馬と馬車は、決して間隔を縮めることも離れることもない。
跨った馬の背中を貫く棒にしっかり掴まってさえいれば、大丈夫。
決してこの回転し続ける円環の外に出ることはない。

この安心感と、同時に襲ってくる切なさ。泣きそうになる。

思えば、遊園地には「軸を中心にグルグル回転する」たぐいの乗り物が多い。
同じところを回り続ける安心感、でも回り続ける時間はあっという間に終わってしまう切なさが遊園地にはある。
ほんの束の間なのに、永遠の円環に取り込まれてしまったような不思議な感覚。
ずっとそこに浸っていたい、でも浸っていたら自分が押しつぶされて崩れてしまいそうなあの感じ。

なかでもメリーゴーランドは凝縮し研ぎ澄まされた何かがある。

多分、なんだけど、昔幼少期に、親が仕事で忙しくてしばらく叔母の家に預けられていたことがあった。
その時に連れて行ってもらった遊園地でメリーゴーランドに乗せてもらったような気がする。

どの馬に乗ろうかとわくわくした気持ち。
馬とステージが動き出したときの高揚感。
乗れたのは束の間だったこと。その束の間に感じたキラキラした楽しさと切なさ。
叔母と叔父は、このキラキラした乗り物に乗せることで、両親から離れてひとりぼっちの幼い私の寂しさを紛らわそうとしているのだ、と見破ってしまったときの惨めさと哀しさ。

久々に、娘とメリーゴーランドに乗って、あの時の思いが瞬時によみがえった。
時に立ち返ってしまう郷愁。
これこそが、「月」なのか。

※(月、についてはまた別記事で詳しく書く予定です)

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