友人が名付けてくれた私の色。暗礁に乗り上げた船とダム底に思いを馳せて

‘海底に 沈没船を眠らせて 
静かに波打つ ターコイズブルー’

2年前のことだった。ちょうど今頃、3月上旬の時季。

Twitterで、とある方が「あなたのイメージを’色’で表現します」という企画をしていた。
その頃私はTwitterを始めて1年弱、少しずつ繋がる人も増えてきた時期だった。
当時私のTwitterのタイムラインは「企画もの」でわんさと賑わっていた。企画系っていかにもフォロワー稼ぎ狙いの匂いがするなと、あまのじゃくな私はつい色眼鏡で見てしまい興味が持てず、遠巻きに眺めていた。だがこの企画に関しては主宰者のアカウントが醸し出す人柄に好感をもったのと「無意味に意味を見い出す」「その人の特徴を色であらわす」というコンセプトに心惹かれ、思わず参加してしまった。

すると彼女は私をこのように表現してくれた。
「沈没船をそっと眠らせたまま優しく見守る海のターコイズブルーです。優しく波を立てて起こさないようにしています。いつかの悲しみを包みこんだ色。強さと優しさの色です」

…なんと文学的な響き!まさか私のことをこんなに美しく表現してくれるなんて…と、驚きと照れ臭さを感じながら、繊細な語彙とそこから湧き上がるイメージにうっとりした。同時に、彼女の一言でもって私のこれまでの人生の本質部分をズバリ言い当てられた気がして、ドキッとした。実際の面識はなくても、ネット上での振る舞いからその人のイメージはある程度わかるものなのか。

(彼女のアカウント名は「あわじさん」。当時のツイートのスクショを掲載させていただきました♪)



まず、色自体がそのまま言い当てられている。
昔から自分がしっくりくる色のひとつが「緑と青の中間色」だった。この色は普段から衣服にもよく取り入れるし、結婚した時に新居で使うカーテンの色も、結婚披露宴で選んだ大のお気に入りのカラードレスも青みのあるグリーンだった。(このブログのテーマカラーはやや黄みががった草色だが)

それから「沈没船」というワード。これがまた絶妙なチョイスなのだ。
この歳まで生きてれば、悲しい過去のひとつやふたつは(いやそれ以上)あるもので。

悲しい過去の代表として思い出すのは、若き日の挫折。
かつて20代の頃、インドネシア語で食っていくんだ!と志し、意気揚々と上京した。鼻息荒く鉄砲玉のように西日本の片田舎から東京に飛び出してはきたものの、どこかの企業に正規採用されていた訳でもなく、現地に引っ越してからアルバイトを探すという荒技に出た(この辺りについては諸々事情があった)。だがいきなり語学だけではやっていける筈もなく、都会の高い家賃を賄うため日銭を稼がねばならなかった。
語学以外に興味をもつ仕事や活動に片っぱしからトライしているうち、2年経ち3年経ち。しかしいつまでたっても語学の仕事は不定期で一筋には定まらず、やむを得ずアルバイトを複数掛け持ちしたが生活基盤は不安定なまま30代を迎えた。一体自分は何をしているのか、一体何を目指したいのか分からなくなり不安と焦燥に駆られ、7年目に挫折した。

語学の仕事獲得への情熱と努力が足りなかったのか、そもそもの目的が自分に合っていなかったのか今となっては分からないが、当時の自分はまるで「枯れかけたダム」のようだった。順調な時は滔々と水をたたえて表面的には何ら問題ないが、干魃で水位が下がると底に沈んでしまった在りし日の集落の残遺物が露わになり目も当てられない光景が広がっている、みたいな。

こうして、東京で暮らしてインドネシア語で身を立てて故郷に錦を飾る、という夢は潰えて、地元に戻り別の道を歩んだ。やがていつしか再び水はコンコンと湧いてきて、今こうして別の仕事や家族にも恵まれて生きているが、やっぱり自分自身の奥底深くには、いまだ座礁した船の残骸がたゆたっている。

つくづく私は感受性をフックに生きていると実感する。心の琴線に触れる出来事があると自分の内側が色鮮やかに照らし出され、それを表現したくてたまらなくなる。ストレングスファインダーで共感性が2位なのもさもありなんだ。冒頭の短歌は、彼女の描写をもとに私が作ったものだ。

しかしあらためて驚いたのは、彼女の才能である。久しぶりに当時の彼女のツイートを見返したが、私を含め実に50名以上のフォロワーに対して、一人一人丁寧かつ繊細に綴っているのだ。実際に会ったこともない人物のことを、アイコンやアカウントの雰囲気、発信内容から色とストーリーでイメージ化し短い言葉に紡ぎ出す絶妙なセンス。見事だというほかない。彼女こそ、ずば抜けて豊かな感受性の持ち主だ。凄い。彼女はただ者ではない。

(追記:Twitter上のやりとりはこちらから。https://twitter.com/jaianssss/status/1102190614903349248

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