新世代のカバーで新たによみがえる、90年代の名曲 Chris Isaak クリス・アイザック ”Wicked Game”

「好みの曲の、色んなカバーバージョンを聴いてみる」
これは、音楽を楽しむ方法として有効だ。

今まで、動画サイトなどでよく見かけるカバー曲は何となく鬱陶しく感じていた。オリジナルが聴きたいのに検索するとカバーばっかり出てくるイメージで。
オリジナルに勝るものはない。カバーなんて所詮真似っこだ、と。

しかし、その認識はとんでもないと分かった。
ひとくちでカバー曲といっても千差万別で、丹念に聴いていくと幅広くて奥深い。
先日SNS経由で偶然、昔聴いていたWicked Gameのカバー曲にたどり着いたことで気づいたのだ。

Wicked Game とそのオリジナルバージョン

Wicked Game は、1990年にヒットしたChris Isaakのバラード曲。
原曲は、こってりした男性フェロモンたっぷりのエルビスプレスリー風なロカビリーサウンド。David Lynch監督の映画 『ワイルド・アット・ハート』 (1990年)のテーマにもなっている。

原曲はこちら。

公式PVとはやや歌詞が違うが、こちらのほうがライブ感がでていて聴き比べ甲斐がある。
この字幕はスペイン語?

そして、カバーバージョン

また、時代に伴うアレンジの変化や、歌い手の性別が異なることで、趣も随分変わる。原曲と音程(キー?)が同じか違うかとか、場合によってはおそらく歌い易くするために原曲よりもオクターブの幅を狭めていたり(ここで一オクターブ高く上がるはずのところが上がっていない!)など。
このような細かい違いは、原曲をよく聴きこんでいるほど見つかりやすく、それもまた興味深い。

動画サイトで検索すると、有名な曲は無数のカバーバージョンがある。

確かに歌い手のレベルによって仕上がりは千差万別だが、少なくとも、どんな歌い手であっても原曲に愛着があったからこそカバーしているに違いないし、彼(女)独自の息吹がふきこまれて、原曲とは異なった音に進化している。

同じ曲でも歌い手それぞれに独自のセンスや生き方が滲み出ていて、各自の特徴を味わうのがたまらないのだ。

カバー厳選3曲

そして、原曲に勝るとも劣らず、いやむしろ原曲よりも良いのではないのか?というカバーバージョンを3つ見つけた。

1:Andy B

1曲目はこちら。
Andy Bという男性によるギター弾き語り。
静かで抑えめで原曲に忠実。独特の透明感があり、抵抗なくスッと入ってくる。

斜め横顔がどことなくブルース・ウィリスに似ている。

2:Daisy Gray

2曲目はこちら。
Daisy Grayという女性によるピアノ弾き語り。
原曲とはキーが違うが、オクターブを上げるところは上げて、サビの部分の裏声など、原曲の持ち味は押さえながらのアレンジ。聞き惚れた。

フェミニンな風貌と声にチェックのシャツの組み合わせが渋い。
この感じ、アンジェラ・アキを彷彿とさせる。

3:Allie Sherlock

そして3つめ。
Allie Sherlockという女性で、路上ギター弾き語り。
ハスキーかつあどけなさが漂う声質。
こちらのアレンジもぐっとくる。彼女独自の生きざまを感じる。

野太めの声とあどけなさのギャップが魅力。
彼女の歌声を聴くと、本質を捉えるのに年齢など全く関係ないと確信する。

カバーに込められた想い

動画サイトを検索して分かったのだが、Wicked Gameは世界中で、実に多くの人たちによって歌い継がれている。もう十分クラシックの域だ。

中にはこんな「Wicked Gameのカバーコンテスト」的なTV番組もあって驚いた。歌い手それぞれの人生に込められたWicked Gameの物語があるのだろう。

17:30頃〜のAHTOH というロシア系の男性が歌うバージョンが良かった。

私が二十歳そこそこの若かりし頃、独り6畳アパートに引きこもってまだ見ぬ恋愛に想いを馳せながら、CDやVHSビデオで繰り返し聴いていたWIcked Gameが、四半世紀かけてこんな多様に進化を遂げていたなんて。

音楽は聴くだけじゃなくて、その人が主体となって歌い、奏でることで新たな命が吹き込まれるのだ。
人がカラオケを歌いたくなる心理もこういうことだったんだ。

しかし、ピアノやギターで自在に弾き語りできるってホント羨ましくて憧れる。
私も自己満でも下手の横好きでもいいからやってみたい。

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